MOMOMOGA(モモモガ)

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小説

店内にはペレルマン同様に常連客となってしまった、私服姿の石川の兵士たちの姿がある。ペレルマンの問いに相槌を打つ者、無言でグラスを傾ける者、関心無さそうに煙草を吹かす者、共通しているのは、熱く燃えるような愛国心とは無縁なところだろうか。「とはいえ、正直なと

今日も薄暗い店内には、いつもジャズソングが静かに流れている。冬本番を迎えている新南魚沼の街は、夜になると冷たい北風が吹きぬけていく。それでも従来なら人通りが絶えることは無く、繁華街の明かりは灯り続けたものだが、今年の冬は全く異なる風景に街は姿を変えていた

「局長も人が悪いですよ、本当に。……それで、いつ頃から取材チームを送り込むつもりなんですか?」「そうだね、まだ今はその時点ではないと考えている。魚沼が急速に勢力圏を回復しているとはいえ、まだ本来の国土の半分にも到達していない。少なくとも西側の安全は以前よ

「……ところで、そろそろ旦那さんの事が心配なんじゃないか?」「いいえ、全く、あの無節操な下半身は死んでも直りませんから。どうせ今頃、石川相手でもピンピンしてるに決まってますわ」「やれやれ、素直じゃないね。まあいい。レベッカ、たまには長期出張に出てみる気は

スタッフがわらわらと動き出し、カメラマンが相棒たるテレビカメラから身体を離す。OBCナイトニュースのスタッフたちの挨拶に手を挙げて答えながら、レベッカはスタジオの外へと向かう。スタッフの一人――音響担当の一人だったか――が押さえてくれていた扉をくぐり、やや無

金色の王が座っていた玉座だけは、謁見の間に残されている。だがそこにあるべき主の姿はどこにも見えず、見学者たちがどうやら置いていったらしい硬貨だけが、その足元に無数に散らばっているのだった。その硬貨の上には、今や埃が薄く積もり始めている。純金で作られていた

ゴトン、という鈍い音が誰もいなかったはずの謁見の間に響き渡った。音のした方向に視線を向ければ、驚いたことに床の一部がくり抜かれたように持ちあがり、中から年の頃は20代前半らしい若者の上半身が姿を現していた。長く軍属にある人間の悪い癖か、自然と腰に回った手を

新南魚沼の街に着任してから、二週間が過ぎ去ろうとしていた。クレーターの無い幸福な土地の上に立つ古くからの都市は、しかしヴォイチェクの心に失望をもたらしただけであった。着任早々、着替えを詰めたピギーバックは丸ごとストリートチルドレンの一人に持ち去られ、その

「市長、市議会、及び地元の商工会の支持はほぼ取り付けた……か。財界というよりは地元の名士たちですが、よくぞこの国を見捨てずにいてくれました。おかげで、オザーバ幹事長たちに対抗するためのささやかな基盤が私にも出来ました。とはいえ、このまま待っているだけでは

「それでは、よろしくお願い致します。すみませんなぁ、ホントに」ドアがゆっくりと閉ざされるまでの間、深く折った腰を戻すことも無く、カークランドは頭を下げ続けた。やがて家人が家の奥へと去ったことを確認してから、ようやく彼は姿勢を戻した。一方の手で腰を叩きなが

マグカップを持ち上げたヴォイチェクの手が止まる。やれやれ、といった風に、プリスタフキンの口元に苦笑が浮かんだ。お見通しだったか、とヴォイチェクの顔にも苦笑が浮かぶ。「後方の実務もろくに知らんパイロット崩れに出来る即席の仕事といったら、せいぜい捕虜の尋問官

「――久しいな。どうした?飛べなくなった飛行機乗りの生き方でも教わりに来たのか?」「元気そうだな、プリスタフキン。……ま、そんなところだ。ご覧の通り、飛べないパイロットの仲間入りだ」「魚沼にも大したパイロットがいる。俺でも出来なかった、シュトリゴンの長の

普通に歩くことが出来る、という状態がどれほど恵まれたものであったのか、今なら嫌というほどヴォイチェクは理解出来る気分であった。厳しい訓練に耐え続けてきた身体であればこそ、この程度の期間で回復出来たことは事実なのだが、その代償として彼は「回復出来ない」傷を

「えーと、ちゃんと話をしようとは思っていたんだよ。ちゃんと」「全部終わってからのつもりだったでしょ」「う……図星」「全くこの子は……」とはいえ、たまにチェックしている成績が落ちているわけでもないし、クラブをサボっているわけでもない。自分の昔を思い出せば、

故郷と比べれば格段に温暖なニューヨークでは、11月に入ったからといって真冬用のガウンを羽織る必要が無い。長袖の綿シャツか薄手のパーカーにでも袖を通しておけば、少なくとも室内なら問題の無い程度の涼しさだった。毎日ポストに押し込まれている複数の新聞の朝刊に目を

「さて、カークランド首相はこの後すぐに魚沼へと帰国したわけですが、マクワイト記者、今後魚沼政府はどのように今回の石川による侵攻に対処していくと想定されますか?」「はい、ええとですね……実際にはかなり厳しい対応を強いられるのではないかと思われます。というの

カメラのサブモニターに、「OBCナイト・ニュース」のタイトルロゴが踊る。緊張とは常に同居を強いられる職場が、今日は一段と張り詰めているようにレベッカには感じられた。それは、伝えるべきニュースの内容か、報告者としての自分の緊張か――。「こんばんは、OBCナイト・

よりにもよって、ぶつかった相手は石川の兵士だった。憎まれ口の一つでも叩いてやろうと思って睨み付けた先には、ちょうど父親と同じくらいの年頃の男の、少し困ったような顔があった。それから気が付いた。兵士は石川語ではなく、流暢な魚沼語でマティルダに話しかけている

何やら甲高い話し声が聞こえてくる方向に視線を向けたマティルダは、そこに複数の軍服と、真ん中でマイクを持って何やら偉そうに演説している男の姿とを見出した。放送局独特の大きな集音マイクに加え、テレビカメラの姿もある。わざわざスーツをぴしりと着込んでいるところ

いつの間にか、新南魚沼にも冷たい風が吹く季節になっていた。今の住処に行き着いたときには、まだこの街は真夏だったはずなのに。夏と比べれば随分と優しくなった日差しを見上げながら、マティルダは変わり果てた新南魚沼市街を散策している。新南魚沼が襲撃されてからしば

「盛り上がってるところ悪いんですがね、少しは手伝って下さいよ。台所だって立派な戦場なんですからね!!」「お、コック長。悪いがナンとカレー、お替わりを頼む」「台所では私が先任です。隊長もご自分でどうぞ」「やれやれ、都落ちしてからロクなことない……」この寒い

夜の帳が下りた魚沼の空気は、さすがに寒い。暖房を効かしたコンテナの中とはいえ、窓からの冷気が室内気温を押し下げていくのだ。夕食時を迎えた部下たちが一斉に集まると、食堂兼会議室のコンテナの中は手狭。ついでに言うなれば、むさ苦しい。別の基準を設けて、もう少し

デスクの上に転がった、真っ二つにへし折れたボールペンを指で弾き、レベッカは胸ポケットから長年使い込んできたペンを取り出した。放送局が用意するプラスチック製のペンは、こういう時に頼りない。その点、良人が贈ってくれたこのペンは安心出来る。何しろ、その材質とき

カメラのサブ・モニターに映し出される「OBCナイトニュース」のタイトルロゴの姿が、普段とは異なり重々しくレベッカには感じられた。今の自分はOBCのゴールデンタイムに放映されているニュース番組のメインキャスターなのだ、と言い聞かせて、努めて平静を装っているつもり

さわやかな太陽の光が、大地に、そして新南魚沼の街に降り注いでいる。初夏の風が、磯の香りも一緒に運んできて、この街独特の夏の香りが辺りを包み込んでいく。新市街の高台に建てられたその家の庭からは、近代的な新市街のビル群、新南魚沼の人々の自慢の一つである「王様

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